コラム
第2回 東京の業者を紹介してくれ

いかさま賭博の誘いの文句は「妹が日本へ留学するので、日本の話を聞かせてくれ」であると、NHKの海外安全情報で言っていましたが、私も「東京で内装工事の仕事があるので、東京の業者を紹介してくれ。」と中国系のマレーシア人に言われ、「日本のことは任せておけ。」という親切心というか、日本人として協力したいという気持ちと、ちょっと儲けたいというスケベ心を利用され、東京の友人を紹介して、結果として関係したすべての人に迷惑を掛けてしまった話を書くことにします。いかさま賭博のビジネス版のようなずっこけた話です。以下は読んで下さる方への注意のためにも日本の友人たち以外はすべて実名で書きます。

去年の10月の上旬に、クアラルンプール郊外のUSJという場所にあるZENという会社の社長のアヴィンという中国系のマレーシア人から私の事務所に電話がありました。内容は、「インドのソフトウエアの巨人企業のサティアムという会社が、東京で事務所を作るので、内装業務を自分の会社に依頼してきた。しかし自分は東京で業者を知らないので、紹介してくれ。」でした。マレーシアの人からこのような依頼はよくあるので、「必要なら、数社の名前を挙げるから自分でコンタクトしてくれ。」と言うと、「いや、自分は日本の企業との付き合い方が分からないから、あなたと一緒にやりたい。当然、十分なお礼はする。まず相談したいので、事務所に来てくれ。」というので、いつもの私なら、「結構です。」と冷たく反応するのですが、ちょうど風水の本の翻訳出版のことで東京に10月の半ばに行くので、ついでに内装業者とのアレンジをしてやってもいいかなあ、小遣い稼ぎにもなるから、と思ってしまい、のこのことZENという会社のアヴィンに会いに行ってしまいました。

その事務所に行った時に、思っていたよりもずいぶん小さい事務所であると感じ、本当にインドのサティアムのような企業がこんな会社に依頼をするのかなあ、と一瞬思いました。しかし私と一緒に東京に行くことになっていた親しい友人で、風水の仕事をしているニッキーが、アヴィンと幼馴染ということが偶然分かり、3人で東京へ行こうという展開になってしまいました。

東京では、内装業者の友人とIT関係の工事業者の友人が待っていてくれて、サティアムの内装工事をやろうということで話がまとまりました。しかしいざサティアムの事務所に行ってみると、インド人のスタッフから「お前たちは業者に選ばれたわけではない。見積もりを3社以上から取って、一番安いところに依頼する。」と釘を刺されました。「えっ、それでは話が違うじゃないか!」と私がアヴィンを問い詰めると、「サティアムの取締役に俺が賄賂をやる約束して、この仕事はもらうことになっているんだから、心配するな。もう内定している」と言うのです。それなら、ということで、インド人と打ち合わせを進めました。

サティアムのインド人たちと話をすればするほど、この会社の日本人事務所の杜撰さが、いろいろと見えてきました。まず、サティアムの体制は、日本人のマネージャークラスのスタッフなしで構成されていて、インド人のみで事務所を運営しています。そのインド人たちはほとんど日本語ができません。ですから日本にいながら日本のことは全く分からず、新しい事務所を借りたものの、内装工事を始めることができていない現実が分かりました。なんと彼らは1ヶ月500万円の家賃の事務所を結果的には半年間使用しないで遊ばせることになりました。10月の時点では、家主の森ビルとのコミュニケーションが取れないので、内装の条件なども全くわかっていないことも分かりました。

そのような状態なので、私の友人がサティアムに一からすべて説明し、家主から条件を聞き、サティアムの希望にそった見積もりが出せるまでの段取りをすることになったのですが、それに対してサティアムは一切報酬を支払わず、他の業者に私の友人の提案と図面を元に見積もりをさせ、その業者に仕事を渡してしまいました。

見積もりの作業をする中で、仕事をもらったと言っていたアヴィンは、私の友人に協力するどころか、「見積もり額に30%を上乗せして、それをコミッションとして寄越せ」とだけ何度も言ってきて、「そんなことをしたら、仕事をもらえなくなる」と私の友人が言っても、「3割はいただかないと、自分が日本まで行った経費で損をしてしまう。」という始末でした。業者を決める段階に来た時に、アヴィンに「お前のコネでどうにかしろ。」迫りましたが、結果的に仕事は他の業者の手に渡りました。はっきり言って、全くインチキな話に乗せられたというのが現実で、東京の友人たちには本当に申し訳ないことをしたと思っています。

アヴィンは日本へ行った費用を取り戻すなどと言いましたが、彼が払ったのはRM1550の超格安航空券のみで、あとはほとんど私と友人のニッキーが出しました。本当は、一緒に東京に行ってからのアヴィンのドけちぶりを見た時におかしいと気づけばよかったのですが、その時はただけちな奴だとしか思いませんでした。ドけちとは、食事、電車賃、お茶代、新幹線の中のビール代と駅弁代まで一切お金を出そうせず、零細企業の社長の悲しい性で、つい私が払ってしまうとアヴィンは当たり前のようにしているのです。日本はお前の国なんだから、お前が払って当然と言わんばかりの態度です。

本心をいうと私もサティアムの話がうまくいけば、私もコミッションがもらえるから、アヴィンの分を払ってやっても、まあいいかと思っていたのでした。獲らぬ狸を夢見すぎて、おろかにもお金を出していたわけです。結果は、ババを引いただけでなく、東京の友人たちに多大な迷惑を掛け、私も多大な時間と膨大な国際電話代とアヴィンの日本の出張費用を負担してしまったのでした。

儲かる話を餌に魚釣りをする人は世の中にたくさんいることは知っていますし、お客さんや友人にはそのような人について警告を発している私ですが、自分の小さな欲に目が眩んで、いかさま賭博に引っかかったと同じような結果になってしまいました。

後日談ですが、結果が出てから、怒りに燃えた私はアヴィンに日本出張の経費とコンサルタント料としてRM20,000を請求する請求書を送りました。当然払うはずがないとは思っていましたが、怒りを抑えるためにそのくらいしたかったので、そうしました。もちろん1センも払ってもらえませんでした。しかしこれでアヴィンとは縁が切れたので、すっきりしています。

儲け話を餌に協力を求める人には注意しましょう.


(2005年3月15日)