コラム
第4回 断食月のマナー

イスラム教を国教とするマレーシアでは、毎年断食月の習慣がイスラム教徒の間で厳格に守られています。断食月というとなじみがないかもしれませんが、ラマダンといえば、聞いたことがある人は多いと思います。ラマダンとは月の名前で、日本でも月のことを、2月は如月(きさらぎ)、10月を神無月とかいうのと同じに考えていただければいいと思います。そのラマダンの月は断食の月なのです。断食の月と言いましても、1ヶ月ずっと飲まず食わずではありません。時間が決められていて、夜明け前から日没くらいの間、断食をします。それ以外の時間は飲み食いは自由です。しかし昼間の時間に断食をするというのは、勤労者にとっては大変なことで、工場などでは出勤時間を早めて、早く仕事を終えるなどの措置をとって、断食に対応しています。

前回に続き、マレーシアの常識を無視した日本人の話、特にラマダンの月の出来事を紹介します。基本的な考え方としては、ラマダンの期間中は、イスラム教徒の多い官庁や会社に訪問するのは避けるのが礼儀とされています。そんなことをお構いなしに、訪問の時期を決める日本人もいて、「なぜ、だめなんだ!」と窓口になっている私に噛み付いてくる人もいます。その理由は、お客様をお迎えする側が断食をしているので、お客様にお茶も出せないし、お昼も一緒に食べられない。職場の生産性も落ちているので、喜んで見せるような状態ではないということです。マレーシア側のそのような事情も無視して、日本で予定を決めたからと行って乗り込んでくる人々もいます。当然、お茶も出されず、歓迎もされずという状態での訪問になってしまいます。

乗り込んで来た団体の中に、ある地方自治体がありました。すでに訪問先とのアレンジは自分たちでして、私はただ通訳を仰せつかり、同行しました。行った先は、政府系の企業でした。マレーシアで政府系というとほとんどスタッフがイスラム教徒で、当然断食中です。その断食中の人々にこの自治体は、訪問時の昼食を用意してもらうように要請していたのです。私は訪問を終えてから、別のところで中華料理でも食べるのかと思っていましたら、なんとその会社の食堂で昼食を用意してもらい、日本人だけで食事をしました。そのようなことは絶対に要請してはいけないことですし、マレーシア側が気を使って、食事を用意しましょうか?と言ってきても、ラマダン中ですので、お断りしますと断るのが最低限のマナー、礼儀というものです。なかなかいいたとえが見つかりませんが、たとえて言うなら、禁煙の飛行機の中で、日本人だけがタバコを吸っているようなものです。

日本人は宗教的な生活を送っていないので、なかなか断食の月などということが理解しがたいかもしれませんが、国際化の一環としてのマレーシア訪問でしたら、マレーシアの習慣をもっと理解し、まず訪問の時期を検討する必要があります。日本でも年末年始やお盆の時に訪問の申し込みを受けても、お断りすると思います。それと同じことです。そして断食の月にどうしても訪問しなければならない時には、食事は自分たちだけするようにしたいものです。