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マレーシアの法廷の表裏 第7回 実しやかな常識の嘘・勝てば裁判費用は負けた方が払う 「裁判に勝てば、裁判にかかった費用は負けた方が払う」と、裁判の経験のない多くの人々が思い込んでいますが、実はそんなに単純には物事は運びません。裁判に勝っても裁判にかかった費用の全額は絶対に返ってきませんし、最悪の場合は全額返ってきません。その理由と仕組みを説明します。 裁判に掛かる費用とは何かをまず見ていきましょう。訴訟を起こすために裁判所に支払う法定費用、弁護士費用、この2つはどんな裁判でも絶対に必要なものです。弁護士費用の場合、1つの弁護士事務所に依頼するだけでなく、2つや3つの弁護士事務所に依頼することになると2倍、3倍の費用が発生することになります。前にも書きましたが、日本語ができるだけで法廷に立たない(立てない)弁護士などに最初に相談してしまうと、当然2つの事務所に支払う弁護士費用が発生します。 その他に証人が法廷で証言をする場合には、その証人に法廷で証言してもらうために来てもらうための謝礼、交通費などが必要になります。日本在住の人に証言をしてもらうとなると、航空運賃やホテル代も必要になります。また専門家にプロとしての意見を証言してもらう時などの謝礼はかなり高額です。不動産鑑定士協会の会長あたりですと1日1万リンギットくらい請求される場合があります。そして日本語しかできない証言のために私のような法廷通訳者が必要な場合にはその費用もかかります。通訳料金は、私の場合、1日あたり900リンギット(+5%税金)です。10年間値上げしていません。(証言が当日なくても、10分だけでも、法廷が開かれなくても、1度予約をした方からは全額いただきます。)また訴訟を起こした本人が日本在住の場合、裁判の度に日本から来る費用がかかります。 このような費用を全部、裁判官に掛かった費用として提出するわけですが、勝訴したからといってその全額が認められるのではなく、裁判官が適当と思われる額が費用として認定され、その額の支払いを負けた側に命じられることになります。どのように計算するかは裁判官の匙加減1つで決まります。通常満額回答ということはまずないといわれています。つまり勝っても掛かった費用のすべてを負けた方に請求できるわけではないのです。 第2の問題点は、勝って、相手に対して、裁判所から裁判案件に関する支払い命令と費用の支払い命令が出ても、それをきちん敗訴側が支払うかどうかは保証の限りではないということです。俗にいう「勝っても取れない」という状況です。マレーシア人の会社が上場していない場合、裁判に負けたら会社をつぶしてしまえ、という考え方で裁判をする人が多く、裁判の終了までに会社の財産をゼロにし、敗訴して裁判所が取り立てを行っても何ないということになります。その会社の取締役個人には個人保証をしていた案件以外は、取り立ては適用されないので、結果的には、勝った側が全く何も取れない状態になります。 つまり勝てばすべてを取り戻せると思って、裁判に勝つためにお金をつぎ込むような無謀なことは決してしてはいけないということです。 |