|
マレーシアの法廷の表裏 第8回 何を尋問してもよいマレーシアの弁護士 マレーシアの法廷で証人の通訳をしていて驚くことは、マレーシアの法廷では弁護士は証人に対して、どのような質問をすることも許されているということです。よく日本の法廷のドラマやアメリカの法廷の映画などを見ていると、質問をしていない方の弁護士が「誘導尋問です。」と抗議をするシーンがたびたび出てきますが、マレーシアではほとんどそのようなシーンにはお目にかかれません。 マレーシアの法廷での証人の尋問は、3回行われ、最初が証人の側の弁護士によるExamination in chief(主尋問)があり、次に相手側の弁護士によるCross Examination(反対尋問)、そしてもう1度証人の側の弁護士によりReexamination(再尋問)があります。 最初のExamination in chief (主尋問)では、裁判官に弁護士が自分の主張を通すために、証人に有利な質問をし、よい印象を与える努力をします。その際に、裁判の案件とは直接関係のない、証人がよい人間であり、嘘を言う人間でないことを印象付けるために、証人に家族構成や過去のビジネスの実績、慈善活動などについて質問することがあります。相手の弁護士も裁判官もそのような質問を「本件には関係がないので、却下してください。」とは言いません。黙って聞いています。 Cross Examination(反対尋問)は、証人の証言のメインとなるものですが、マレーシアの法廷ではここで誘導尋問(leading question)が頻発します。証人が嘘をついていたことを認めざるを得ないように、うまく誘導尋問をしていき、最後に「嘘をつきました」と認めさせるなど、様々な手法が用いられます。このような最高のスキルもっている法廷弁護士は、1日に1万リンギットの謝礼をもらっています。 ここでよく使われる弁護士の手法の1つが、証人を怒らせることです。証人の論理展開とまったく違う論理展開で、証人をいらいらさせ、証人をこき下ろし、証人が我慢できなくなり、法廷で怒り表現したり、汚い言葉を吐いたりすることで、裁判官の証人に対する印象を悪くしようとすることです。私の知っている証人で相手の弁護士に向かって「Shit!」(くそ!)と叫んでしまった人がいて、その場で裁判は即刻中断、裁判官の部屋(Chamber) で、双方の弁護士と裁判官で話し合いが持たれ、その証人が正式に裁判官の前で謝罪をすることになりました。私の目から見れば、弁護士の方がよっぽどひどいことを証人に言っているのですが、証人のたった一言の「くそ」の方が問題になってしまいました。 Reexamination(再尋問)は、Cross Examination(反対尋問)で証人が誘導尋問やあがったりしてミスをしたことを回復するために行われます。敗者復活戦というか、つくろいのための尋問です。 マレーシアの法廷では、弁護士は何を言ってもいいので、証人になると酷いことを言われる可能性もあるので、できれば証人の立場に立ちたくないものだと思います。 |