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マレーシアの法廷の表裏 第9回 審理の予定は未定 マレーシアでの裁判所の通訳の仕事をしていますと、2回に1度は私はただ裁判所に行っただけ、とか裁判所に座っていただけという状況になります。ですからお客様からは、私に予約を入れたら、審理が開かれなくても、開かれて私が通訳をしてもしなくても、その日1日分の通訳料をいただくことになっています。 なぜ審理が開かれると予定がきちんと決められながら、実際にはその通りにならないのでしょうか。その理由はいくつかありますが、第1は、裁判官のMC(病欠)です。裁判官が急に病気になって来られなくなったので、その日は審理が開かれないということです。日本の弁護士さんと一緒の時などに、そのような状況に出会うと、日本の弁護士さんは口を揃えて、「日本では裁判官の病欠などありえない。」と言います。日本の裁判官は超人的な鉄人で絶対に病気をしないのかというとそうではなく、たとえ熱が40度あっても出てくるからだそうです。それは日本的な美徳ですが、40度の熱のある裁判官に裁判をきちんと行うことができるかどうかも疑問でありますので、マレーシアのように病気になったら、きちんと休む方がよいのかもしれません。 第2は、弁護士のMC(病欠)です。どちらかの弁護士が病気になると、今日は審理は止めて、別の日程にしましょう、ということになります。弁護士が法廷に出てきて、自分で体調が悪いので、別の日にしてくれ、という場合と、同じ事務所の若い弁護士が出てきて、別の日にしてくれという場合があります。全く連絡もなく、一方の弁護士が来ないので、審理が開かれなかったこともあります。 第3は、弁護士が上位の裁判所での審理に出席しなければならなくなった場合に、そちらを優先してもいいという法則がありますので、そのような場合も審理が延期されます。しかしこれは事前に分かることなので、日程を調整する時に、上位の裁判所への出廷を理由に裁判官から示された日を拒否する場合に起こりますが、法廷に行った当日に急に弁護士が上位の裁判所に出廷するので、今日は審理はしないということも時々あります。 第4は、証人が現れない場合です。裁判所での証言をする人は、証人として裁判所から書簡が届き、出廷を依頼されます。依頼を受けた証人が来ない場合には尋問を行うことができないので、審理は延期になります。これは民事裁判ではあまりないことですが、刑事裁判では証人が逃げてしまうことがよくあります。その場合は延期です。 第5は、証人の通訳が現れない場合です。私も1度法廷をすっぽかしたことに裁判所の記録上はなっております。実は裁判所から通訳の依頼が来て、依頼人の弁護士から連絡があるので、料金などは直接話し合って欲しいとの手紙をもらいました。私の通訳料のことで依頼人が同意しなかったので、私は「それでは通訳はできない。」と口頭でその弁護士に言ったのですが、その弁護士が他の通訳者を見つけられずに、そのままにして出廷し、自分のミスを隠すために、私が通訳を承諾したのに出廷しなかったことになってしまいました。その日に依頼人から直接ものすごい剣幕の電話があり、「あんたが来ないので日本からきた証人が証言できなかった。どうしてくれる!」と言ってきたので、私は「あなたの弁護士に私の通訳料を同意してもらえなかったので、口頭で断った。」と言いました。そうしたら「なんで文書で正式に断らないのだ!」と言ってきたので、「そんな義務がどこにあるのだ!」から始まり、電話で大喧嘩をしてしまいました。法廷通訳者がいないとやはり審理は開かれません。 以上のような理由による状況が頻発しますので、審理の予定は未定に近い状態となり、1つの裁判が5年から6年かかることになってしまいます。 |