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マレーシアの法廷の表裏 第10回 裁判で勝った時に負けた側からお金を取る方法 マレーシアでの裁判は時間がかかりますが、判決は法律に基づき公正に出されます。しかし判決が出た後に、判決がそのまま執行されるかというと、会社を相手にして裁判に勝っても、なかなか負けた方からお金を取ることができないというのが現実です。その理由は、前にも書きましたが、「法人の覆い」と呼ばれる法律の原則があるからです。会社が裁判に負けた場合には、会社が法人として支払命令を裁判所から受けるだけで、会社の株主はもちろん、取締役個人には支払命令が及びません。ですから判決が執行される前に、会社の財産を他の会社に移し、会社を空っぽにしてしまえば、会社には支払い能力がないということで、買った側は何も取れないということになってしまいます。それは夫婦が2人で株主と取締役をやっているような小さな会社でも上場企業でも同じ原則が貫かれ、実質的には裁判に負けたのはその夫婦個人なのに、その2人には支払い責任が発生しないということが起こります。 上場企業が裁判に負けた場合、よほどのことがない限り判決に従いますが、中小の会社の場合には「つぶしてしまえ!」ということでお終いです。そして同じ場所で、同じ商売を別の会社ですることができるのです。おかしいといえば、おかしな話ですが、それが「法人の覆い」の原則です。 そのような結果を防ぐ方法がいくつかありますが、それらの方法は、相手となる会社と取引を始める前の段階できちんとしておかなければならないもので、問題が起き、訴訟が起こった段階では何もすることはできないということが大前提になります。私のところにご相談に来られるお客様の9割が問題が起こった時に来られる方ばかりです。マレーシアでの取引を始める前に相談を受け、きちんとした手を打っていれば問題は回避できるのですが、取引の前にコンサルタントに払うお金を無駄な経費と思われるか、ほとんどの方が必要ないと思われるようです。そして数年後に問題が起こり、コンサルタントに支払うお金の何千倍、何万倍ものお金を取られてしまう結果に陥っている人もたくさんおりますので、転ばぬ先の杖ではありますが、取引を始める前にご相談いただければと思います。(宣伝してすみません。) どのような防止策があるかといえば、その第1が個人保証です。具体的な例を挙げて説明しましょう。私は以前サイバーライト社というパソコンの小売をやっておりました。富士通の代理店として富士通のパソコンを販売していたのですが、富士通からパソコンを買掛けするにあたって、代理店契約を結び、そこでサイバーライト社の取締役として私個人とマレーシア人の取締役が個人保証の署名をさせられました。つまり「サイバーライト社が買い掛けの期限内に支払いをしない場合には、署名をした取締役が個人として責任を持って富士通さんに支払いをします。」という約束をさせられたわけです。このような契約をしていますと、会社が空っぽで何も取るものがない場合でも、取締役個人に取り立てにいけますので、取締役が個人破産をしない限り、取り立てることができます。また1人ではなく数名に個人保証の署名をしてもらうことが通常行われますので、1人が個人破産しても他の人から取り立てることができます。外国人の場合にはマレーシアから逃げてしまうと取り立てが非常に難しいので、通常はマレーシア人の取締役にも必ず個人保証をしてもらうことが重要になります。 第2は法人保証です。原理は個人保証と同じですが、親会社や関連会社で、上場していたり、大きなビジネスをやっている会社に保証してもらうことです。大きなビジネスをやっている会社は会社を空っぽにして逃げるというわけにはなかなか行かないので、通常は裁判に負ければ支払いをしてくれます。 第3は、銀行保証の提出を要求することです。銀行保証とは、何かの条件が満たされれば、あるいは満たされないと、銀行に銀行保証の証書を持っていくと支払いをしてくれるというシステムです。大きな会社ですと銀行の融資枠の中に銀行保証がありますので、それを要求することは決して理不尽なことではありません。 以上のような保証は、取引の力関係で成立しない場合もありますが、お願いをすることで会社どうしの関係が壊れるようなことは、マレーシアとの取引の場合にはあまりありませんので、可能かどうかを話し合う価値は十分にあると思います。 |