Whereas (前文)

辞書には、<【副】〜であるが故に、〜であるのに^対して[反して]、ところが>と出てきますが、契約書の中では、日本語で「前文」と訳すことで、契約の本文に入る前の説明を述べる部分と言う意味が伝わるので、私は迷わず、「前文」と訳しています。

Whereasの後に書かれる内容は通常、ビジネスの背景、当事者の目的、交渉の経過、関連契約書またはその他の状況などです。

日本のお客様から契約作成をする過程でよく依頼があるのは、この前文に「双方の当事者はできうる限りの努力と誠実さを持って、この契約の目的を達成するために努力し、不測の事態が発生した場合には、双方の当事者は誠意を持ってこれを解決する。」というような内容を挿入して欲しいということです。前文を日本の方は、精神的な当事者どうしの決意のようなものと考えている人が多いようです。

おそらく多くの日本人は契約というものを、双方の当事者が信頼関係にある状態を文章で表現したものと考えているのではないかと思います。しかし国際社会における契約とは本来、違ったバックグラウンドや思考方法、状況にある者どうし、つまり「あうん」の呼吸で物事を一緒に進めていくことのできない者どうしが、いろいろな約束事を交わして、お互いを縛り、物事を進めていくために作られるものです。そしてもしそれに外れたら、弁償を含む補償を要求しあうことを確認し、公的権力にその判断をゆだねることを確認するために存在します。

ですから前文で、「誠意をもって」とかいう精神論を挿入するのはなく、「私は**ができ、**をしたい。」「あなたは**ができ、**をしたい。」「だから一緒に**をしよう」という内容を盛り込むことがビジネスの道具としての契約にとって大切なことです。

「あうん」の呼吸で物事を進めることができる人どうしの間には契約は必要ありません。そして契約の前文は、精神論や理想論を展開するところではなく、何についてなぜ契約を結ぶのかを書く場所です。


リストへ