マレーシアで生活する日本人(個人)のための法的なアドバイス
第3回 マレーシアでのコンドミニアム賃貸に関する法的アドバイス

マレーシア在住の日本人のほとんどがコンドミニアムに住んでおり、ほとんどの人が賃貸のコンドミニアムを借りていますので、人によっては悪い大家にぶつかったり、杜撰な管理会社のために不条理な思いをしている場合もあります。私のところにも年に数人のお客様がコンドミニアムに関することで相談に来られます。

相談に来られる前に、ほとんどの方が「賃貸契約を日本語に訳していただけませんか。」と電話をしてきます。英語で書いてある内容がよくわからないので、まず内容を知り、その後に対策を練ろうという意図で、翻訳の依頼をしてきます。そのような依頼を受けると、おせっかいとは思いますが、「コンドミニアムの賃貸で何か問題があるのですか」と聞き、ほとんどの場合、「翻訳をしても、私が儲かるだけで、あなたの利益にはならないから、翻訳はやめましょう。その代わり、よいことを教えてあげます。」と言うことにしています。

では、なぜ賃貸契約書の翻訳をしても意味がないのでしょうか。まず賃貸契約書の翻訳料ですが、通常の場合、賃貸契約書は10ページを越える法律文書ですので、1500リンギットくらいかかります。それだけのものを日本語に翻訳しても、不動産に関する法律の知識かつマレーシアの法律の知識が多少なりともないと、日本文を読んでもちんぷんかんぷんということになります。という意味で1500リンギットを払っていただける私はうれしいわけですが、結果としてお客様の利益にならないので、やめた方がいいと申し上げるのです。もちろん私に賃貸契約書の翻訳を依頼してくる方の大半は主婦の方で、100リンギットか200リンギットで翻訳ができると思って、電話を掛けてこられるので、1500リンギットと聞いて、びっくりして翻訳依頼は引っ込めます。因みに契約書などの法律文書の翻訳の相場は、マレーシアではA4サイズ1枚で100〜150リンギット、シンガポールでは100〜150シンガポール・ドル、日本では8千円から1万5千円です。マレーシアは安いので、翻訳はマレーシアでしましょう。(宣伝ですみません。)

次にコンドミニアムに関する賃貸の問題点の内容に入りますが、以下のような問題が考えられます。(借り手側が受ける被害のみ)
@ 備え付けの家具、エアコン、電気器具などが壊れたのに大家が修理してくれない。
A 強風などで窓やカーテンなどが壊れたのに大家が修理してくれない。
B 水道の水の出が悪い。
C プール、エレベーターなどの共有部分が汚い。
D 郵便物が盗まれる。
E ごみの処理が悪く臭い。
F 警備員や掃除の人の態度が悪い。
G 隣人が夫婦げんかやカラオケ、ピアノでうるさい。
H 隣人の部屋を商売や宗教の集会に使い、訪問者が絶えない。
I 大家に契約満了以前に出ていけと言われた。
J 大家が第3者に賃貸しているコンドミニアムを売り、新しい大家から家賃の値上げを要求された。
上記のものを大別すると、(1)大家の問題、(2)管理会社の問題、(3)隣人の問題、(4)契約上の法的問題に分けられます。

(1)@、Aに関しては、賃貸をする時に、契約書の中に備え付けのもののリストがあり、それがきちんと作動するかどうかを確認することが重要です。そしてそのメンテナンスに関してはどうするのかが契約書の中に書かれているかどうかを確認し、もし書かれていない場合には、別紙で故障した場合の処理方法を書き、大家に署名してもらいます。これは細かければ細かいほどよく、電球1個でも大家の負担で交換してもらおうと思えば、その旨きちんと契約書またはサイドレターと呼ばれる書類の中できちんと取り決めしておく必要があります。通常は斡旋する不動産屋に依頼するのが一番いいと思いますが、もし不動産屋が対応できない場合には、私のようなコンサルタントに依頼することもできます。アドバイスとしては、修理や部品の交換については、借り手が代金を立替え、翌月の家賃から引くというのが大家にも借り手にとってもよい条件と思います。

(2)BからFは管理会社の問題です。これは管理会社に対して、正式に手紙を書くことで問題の解決を図ることができます。もし強力な圧力をかけたい場合には、他の住民と連名で出すこと、そして弁護士事務所に依頼して手紙を書いてもらうことが効果のある方法です。口頭で文句を言っても、なかなか聞いてくれませんが、手紙で、しかも弁護士事務所からの手紙だと大きな効果が期待できます。

(3)G、Hは隣人の問題です。これは直接乗り込んで言って文句をいう方法もありますが、管理会社に相談するのが最も懸命な方法と思います。その他の例として、私の友人の体験を紹介します。私の友人は私と一緒に日本人会のKLグリークラブで合唱をやっていた人で、日本へ帰国した人です。バングサのあるマンションに住んでいた彼は、英語で書かれた「あなたの歌声に非常に迷惑しているので、歌うのはやめて欲しい。」という匿名の手紙を受け取りました。彼は私同様歌が好きで、休みの日に大声でオペラの曲などを歌っていましたが、それ以降、歌えなくなり、ものすごく欲求不満になったと愚痴っておりました。その英語はかなりつたなく、日本人のもののようで、彼も誰が書いたかは想像がついたようですが、そのように相手に匿名の手紙を出すことも、相手が常識人なら効果があります。

(1)から(3)について、あまりにひどい場合、民事訴訟を裁判所に起こすこともできますが、費用の面や時間の面、そのことによる人間関係のこじれなどを考えると、ある程度対策を講じても効果がない場合は、そのようなコンドミニアムは出ていく方が懸命です。

(4)IとJは大家との法的な問題です。コンドミニアムの賃貸契約の場合、どちらかの当事者が3ヶ月前に文書による通知をすることで、契約を解除できるという契約もありますので、契約をする際にきちんと確認する必要があります。そのような場合には、大家から出て行ってくれと言われれば、賠償金も何もなく、3ヶ月後には出て行かなければなりません。マレーシアの法律では大家と借り手の間の関係は、賃貸契約によって規定され、日本のように借り手の居住権を主張することは難しいです。また契約の最後の2ヶ月は、デポジットとして支払った分は家賃と相殺してもらうことが大切です。大家でデポジットをすぐに返す人はあまりいません。デポジットを返してもらうために、訴訟を起こしてもくたびれるだけです。
Jについては、大家が第3者に売却した後も同じ条件で契約期間中は借り続けることができると条項が賃貸契約に入っていれば、そのような値上げに応じる必要はありません。条項がなくても、通常の場合、契約期間中は同じ条件が適用されますので、値上げ要求は断固として無視しましょう。弁護士の手紙くらいでおびえてはいけません。大家が訴訟を起こすと脅してきても、少しの値上げのために費用と時間のかかる訴訟を起こす大家はいないはずですので、無視しましょう。仮に訴訟を起こされても、おそらく借り手が勝つと思います。

まとめますと、賃貸契約を結ぶ前に契約書で確認しなければならないことは、
@ 備え付けの家具、電気機器などリストと実際の照合
A @のものの修理の条件
B 契約途中の解約の条項
C 借りている物件を大家や第3者に売却した際の契約継続の条項
です。

そして最後に、「いいこと」をお教えしましょう。
大家が会社の場合を除いて、個人の場合、ほぼ99%の大家が賃貸から上がる収入の申告を税務署に行っていません。それがマレーシアの現実です。賃貸の収入の場合、28%が課税率です。つまり大家が理不尽なことをしてきたり、いやがらせをした場合で、どうしても泣き寝入りはしたくない場合には、大家が発行した領収書と賃貸契約書のコピーを税務署に持っていって「おそれながら・・」と訴え出ますと、それを証拠に税務署は大家に対して、税金未申告(刑事罪)と未払い(民事罪)により、追徴金を課します。となりますと最低でも借り手の払った3分の1は税務署に取られてしまうことになり、悪い大家の泣きっ面を見ることができます。自分で直接仕返しをしなくても、泣く子も黙る税務署にお願いするという道が残されています。新しい大家の値上げ要求を拒否しても新しい大家は訴えを起こさないと私が確信するのもこの点で、訴えを起こせば、賃貸をしていることが公になって、脱税ができなくなるので、値上げ要求をしてくるような大家ならまず訴えを起こさないでしょう。