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マレーシアで生活する日本人(個人)のための法的なアドバイス 第5回 医療ミスへの法的対応策 医療ミスを話題にしたテレビ・ドラマが日本ではたくさん作られ、多くの人の涙を誘っていますが、マレーシアでも例外なく医療ミスは起こっています。しかし日本ほどマスコミの話題になることが少ないので、あたかも医療ミスが少ないように思われがちですが、実際には医療ミスはかなり発生していると私の知り合いの医者が言っていました。 私自身は医療ミスと言えるほどの被害を受けたことはありませんが、前にも書いたように交通事故にあった時に、マラヤ大学病院で6時間も放置され、単純な小指の脱臼が完治するのに1年以上かかった経験を持っていますので、マレーシアの公立の医療機関を全く信頼していません。公立病院では医療ミスはたくさん発生していると思います。 しかし私のお客様でマレーシアの病院で医療ミスで被害を受けたということで相談に来られた方は今までのところ1人もいないので、患者側からの実体験の事例を書くことはできませんが、医療ミスをした医師の体験を本人から聞いたことがありますので、そのあたりから、マレーシアの医療ミスにどう対処すべきかを考えてみたいと思います。 医療ミスをした医師とは、中国系マレーシア人の開業医です。私が親しくしていた人で一緒に日本に行ったこともある人です。人物は温厚ですが、ちょっとした診断ミスで75歳の老女の病気を悪化させてしまったそうです。その後、その老女は他の医者に診断を受け、一時は回復しましたが、しばらくして亡くなりました。その結果、その街では私の友人の医療ミスのうわさが広がり、その老女の手当てをした別の医師が、私の友人の医療ミスについて詳しく家族に話をしたので、結果としてその家族から莫大な補償金を請求され、私の友人は泣く泣く補償金を払ったとのことです。 そのことがあってから、彼の兄弟が何人か医者をしていますが、彼は皆に医療ミス保険に入るように勧め、医療ミスを犯しても保険金で示談にできるように準備をしているそうです。もちろん友人のクリニックのある町では悪いうわさが流れ、数年間患者数が激減し、彼のクリニックの経営はかなり大変だったそうです。 ここでもうお分かりと思いますが、マレーシアで医療ミスの記事がマスコミにあまり載らないのは、医者が事が裁判沙汰になる前に、お金を家族に払って示談ですませてしまうからなのです。では、私たちが実際に医療ミスに遭わないようにするには、またあった場合にはどうしたらいいのでしょうか? マレーシアの場合、スバン・メディカル・センターのような大きな病院に行かれたことのある方ならお分かりと思いますが、レントゲンのフィルムなどは病院が保管するのではなく患者に渡してくれます。そして医療処置の1つ1つについて詳しい説明を医師がしてくれますし、料金まで提示します。(それはお金のない人には処置はしないよ、という意思表示でもありますので、怖いのですが。)その意味では専門医のいる大きな病院ではかなり情報開示が進んでいると思います。ですから、治療してもらっておかしいと思ったら、どんどん医師に説明を求めるのが、医療ミスを防ぐ最大の防御方法です。時々、私のところにも医師の診断書とコメントを日本人の患者さんに説明したいので、日本語に訳してくれという依頼がきます。私立の大病院では、強行に頼み込めば、日本語での診断書も出てくれ、日本語の通訳付きの説明も得ることが可能です。その意味では病院も商売でやっていますので、評判を落としたくないのだと思います。 そして説明に満足できない場合には、他の病院へすぐに移るべきです。他の病院へ移り、そこの医師に診断してもらい、そこで前の医師と違った診断であった場合、回復した段階で、医療ミスで前の医師を病院を訴えることも可能です。回復しなかった場合でも、2度目の病院の医師が、前の病院の医師の診療ミスにより病状が悪化したことを証明した場合には、それを根拠に医療ミスで告訴することはできます。しかしおそらく告訴をされた病院は示談に持ち込むと思います。医療ミスを刑事犯罪として訴えることはマレーシアの現状では難しいので、民事で損害賠償を求めることになります。そうなると裁判に勝てば、賠償金は入ってくるでしょうが、負けた医師の医師免許の剥奪ということは刑事罰ではないので、起こりうるかどうかわかりません。医師の免許の審査委員会で剥奪が決まらない限り、その医師は医師でいることができます。 私がここで申し上げたいのは、医療ミスの裁判で勝っても健康や命は戻ってこないので、おかしいと思った時点で、頑固にならず、すぐに病院を替わることです。そして最悪の事態が起こったり、どうしても納得できない場合には、病院と医師を告訴し、示談で補償金をもらう道が現状でわれわれに選択できる道と思います。 |